今日から君が代表監督ビッグバンド編

スポーツの試合などを見ていて、いかにやいやい言おうとも、「じゃあお前が蹴って入れてみろ」と言われたらどうにもならない。だからわれわれはしばしば「監督」「指揮官」などの立場に自分を置いて批判を始める。口だけでできるからだ。今回は「山野ビッグバンドジャズコンテスト」に関するそういう話。

くやしながら1日めのみ観覧。どうにか前日東京に帰ってこれたものの、連れともども仕事疲れで体がガクガク。そのうえ聞くこと自体でひたすら体力を消耗する。結局ほんの数バンドのみを聞いて退却。(ラテン連発まで聞きたかった・・・)今までの自分だったら愚痴愚痴言っていたけれど、そろそろ大人なので、こういう年もあるさと自分をようようなだめる。

どういうわけか伝統校が1日目に集中。同志社ザ・サード・ハード・オーケストラ」から慶応「ライト・ミュージック・ソサエティ」まで聞く。
一番強く感じたのは、「バンドの強みを把握できているところは強い」こと。
何が得意で、どんな曲調だったらメンバーの強みを生かせるのか、どんなリズムだったら乗れるのか、どこを強調すればほかのバンドと差異化できるのか、そのはまり具合とはずれ具合が完成度に大きな差を生み出している。ある程度の演奏力がある上でより上位入賞を狙うなら、その絞込みを誤ることはできない。
ある程度吹けるからって、じゃあやりたい曲かっこいい曲やろう!というんじゃ、バンドのパワーの方向性とズレが生じてしまう。しかもたぶん、演奏力があるだけに気づけない。「ん?このバンドこんな欧州系の曲でいいの?こういうのよりかは譜面面派手でもノリ的には基本的、ってのを選んだほうが乗れるんじゃないの?」と感じるバンドもあった。
絞込み失敗の最たるところは早稲田ハイソ。意味がわからない!なんで今こんな誰でも知っているアレンジの「Nica's Dream」を一曲めに持ってくるかな?!伝統回帰にもなっていないし、何も打ち出せていないし。
その前の上智も相当うまいなと思ったけれど、ハイソが始まると「あぁ・・・全然違うな・・・桁違いだ」と感じてしまうくらい演奏力がある。でも「拍手させてくれ!」と希うような、爆発的な感動は起こせない。なんというか、もったいなさ過ぎる。口惜しい。
対照的に、わかりすぎるくらいわかって狙ってやっていたのが、慶応ライト、明治BS。もうこんな巧いバンドに何をいうこともないんだけれど、圧倒。
ここ数年、ベイシーバンドから脱却なのか?と思わせるようなところも見せてきたBS,まぁ巧いからそれだけの余裕があってもかまわないのかな・・・というところで今年は「Strike up the band」。どうくるかな〜と思えば、SAXソロから始まるオリジナル・アレンジのイントロ、それとトランペットソリを追加した以外は、誰でも知ってるあの譜面。
しかし凄い。オリジナル譜面部分でメンバーの見せ場を作りつつ、誰でも知っている原譜の部分を素晴らしい技術で演奏することで観客を圧倒する。
個性、見せ場作り、どこをとっても非の打ち所がない。
また、世界観作りに長けているのが慶応ライト。一昨年リサイタルに行ったときは若干選曲に迷走振りが見えたものの、こういう、他のバンドと競演するような場では、自分たちの個性・長所を発揮する方法をしっかり表現することを忘れていない。ソリストが巧いバンドは沢山あるけれど、アヴァンギャルド(といってもChuck Owenとかだけど)な曲に、これだけ世界観にぴったり合ったソロを取れるメンバーが揃っていることも恐ろしい。演奏力とかそういったことを飛び越えて、曲の解釈、イメージ・世界観作りまで、メンバーの間で共有できていることが解る演奏だった。ちょっと涙が出てきた。

ところでハイソが3曲目に持ってきた「In Case You Missed It」は自分にとって最愛の曲なだけに複雑だった。大好きで大好きで、知っている限りのアレンジを集めている。しかし好きになったのもハイソが7年前に学祭月間でやったのを聞いてからなので(というかこの譜面はハイソしか持っていない)なおさら複雑。
とにもかくにも速すぎ。音が消えてしまう寸前まで速い。どう考えても速すぎる。15分の時間あわせか?全員がわらわらとソロを吹くクライマックスで1音変な音が残ったのもひどく格好悪かったし、ソロはSAXだけだったのに盛り上がりがいまいちだったり、正直満足ではなかった。しかしながらあまりにもこの曲自体が好きなので、イントロを聞くだけで体が震えてしまう。Tuttiになると抗えずぞくぞくと震えが足から頭へ突き抜ける。もうこれをやられたら降伏しかない。なんだか誘惑に耐えられないようでもある。

愛してる愛してる愛してる。