銀河ヒッチハイク・ガイド

nalo9152005-10-02

モンティパイソン系脚本家であるところの(ただし本のあとがきによると本人は影響を否定している)ダグラス・アダムス氏による、コメディSF小説(元はラジオドラマのノベライズ)の映画化。

オフィシャルサイトやあらすじはこちらからどうぞ。

はい、最初の「地球上で2番目に賢い生き物」の導入部でいきなりやられました。
イルカの「さよなら、魚をありがとう」の合唱が主題歌!
このとぼけたミュージカルっぽい展開、まさに、モンティ・パイソン式英国コメディの独壇場。
地球破滅のニュースへの、おざなりすぎる抗議の声。
紙袋をかぶって最後の日に備えるひとびと。
しゃべるソファ。
テレビに構うのが忙しい、やる気の無い究極コンピュータ。
気の利いたデザインのアニメーションが、ちょうどテリー・ギリアムの不気味紙芝居アニメ的効果。
主人公の「典型的な英国人」アーサーがことあるごとに紅茶をほしがるのも、英国系コメディの特徴かな。(でも宇宙船が出してくれるのは彼が持っているイメージから再構成した「紅茶モドキ」だけ)

しかし、場内は。
笑ってない・・・
笑ってないよ・・・
この左上の一角以外全然!!

200人程度の小さなスクリーンだったけど、お約束に噴出すのは、自分の周りばかり、約30人くらいだけ。
他は無言。
自分の周囲だけは、小説を読んだらしいささやきや、「うわぁ、モンティ(パイソン)だよ・・・」といったつぶやきが聞こえてきて、
もう楽しむ準備OK、という状態だけど、
他は無言。(痛い)

みなさん・・・何でこれ観に来たんでしょうか・・・。


これがわかんないなんて!という意味ではなくて、正直観客を選ぶ作品だと思う。
条件としては、

  1. 小説を読んでいる
  2. モンティ・パイソン(または宇宙船レッドドワーフ号)が好き

のどちらかを満たさないと、(1は2の内包かも知れない。事実上。)楽しめないんではないかと。
つまり、例の、イギリス系の笑いを受け入れられるベースがあるか。
そうでないと、つまり「アメリカ系コメディSF」の評価軸のみで見てしまったら、もう「B級SF、金かかってそうなわりにギャグがすべってるイタイ作品」という、ピントのずれた解釈に落ち着いてしまう。
ただ、つくりとして、ときどき「ハリウッド的なまとめかた」を使ってしまっているところがあって、それが「非英国コメディ愛好者」には誤解を招き、「英国コメディ愛好者」にはものたりなく感じさせている気がする。
(具体的には、トリリアンとアーサーを恋愛っぽくする演出しているところや、新しい地球が元通りである設定、よく出来過ぎのヴォゴン人、人種的配慮を受け取ったキャスティング、など。)

まぁそんなところもあるけれど、頑張って作られている作品です。
どう頑張っているかというと。
ひどく独断ではあるけれど、コレ、もっともっとわかりやすくモンティっぽく作ることは可能だったはず。それで大爆笑させるよう設計することも、可能だったんじゃないかな。
ただ、安易に先人の手法を踏襲するのではなく、「あの時代の脚本を、『今』映像化する」 ことに挑戦しているところ。
ネタそのもの、テンポのとりかたは変えるわけには行かないので、少なくとも圧倒的に進化した映像技術で一ひねり加えたいという意図が見えてきた。
ただその試みが多少ハリウッドっぽさをかもし出してしまっているので、なんとも苦しいところ・・・

自分だったら、あの冗長で爆笑の地の文にもっと主張させてしまうだろうな。とぼけた吹き替え声でナレーションをさせてみたい。広川太一郎氏の声が希望。
小林製薬のCMで『助かりマスク』とか言っている人)