1年間で24本映画を観る指令 その3「レインマン」

いい映画でした・・・。


いや、だってさ、いい映画だと特に言うことないんだよ・・・。うん。

自分としては、弟・チャーリーが兄・レイモンドと「家族なのに、意思疎通できない」ことの苦しみが興味深かった。父と長く断絶し、母は早くに亡くなり、家族との絆を感じることのなかったチャーリー。父の死後、初めて会った兄は自閉症でコミュニケーションがほとんどとれない。飛行機に乗せようとすれば殺されそうな絶叫を発し、信号が赤になれば道の真ん中で立ち止まってしまい、中部の砂漠を走っているのにシンシナティのKマートで下着を買いに戻ると主張し続ける。言うことを聞かせることはできず、こちらの状況を理解することもない。悲しいながらも現実的なことに、チャーリーが兄とのつながりを思い出した後でも、ふたりのコミュニケーションは劇的に変わるということもない。急に抱き合って兄弟の愛情を雄弁に語り合うことはありえない。わずかづつの信頼のしずくが溜まるのにつれて、わずかづつ、チャーリーがレイモンドを「読み取れる」ようになり、レイモンドがチャーリーに「慣れる」だけ。自閉症が治るわけではない。レイモンドが変わるわけではない。ただ、チャーリーが、レイモンドの心にゆっくりと近づくだけ。誘拐からコミュニケーション可能に、家族の情愛が復活に、というのは急いた話だけれど、終わりのほうになると見ている自分もレイモンドの抑制された表情から心を必死に読もうとしているようになる。
最後、兄レイモンドが電車でシンシナティに帰るのを見送ったあと、チャーリーがサングラスをかけたまま口元をゆがめ、嗚咽をこらえていたシーンがよかった。




ところで家族を拉致して一週間ほどドライブしながら話をすることで全然意思疎通できないクレイジーな家族関係をなんとかすることができるならばいますぐ免許を取りに行きたい。