未知なる世界 恋愛小説

そういえば恋愛小説って読まない、と思った。恋愛漫画もほとんど覚えがない。なにかいいのを読んだことある?と連れ合いに聞いたけれど、わたしよりも小説を読まないのでこれまた何も挙げられなかった。
恋愛だけがテーマなのがだめだ。何かの話の一環として恋愛要素が入っているのはいい。恋愛がメインテーマで、舞台が現代だとやる気がなくなる。主人公が学生とか主婦とかフリーターとかOLだったりするとさらにげんなりする。冒険とか殺人とか歴史とか経済とか策略のあいだに恋愛がある、というのでなく、ただ日常生活と恋愛、という小説では、なんだかまるで自分の恋愛話ばかりのべつ話し続ける、自己陶酔型の友人をもってしまったような面倒くささにおそわれる。
そう言ったら、「ぷっ・・・子供・・・それって他の要素無しでは恋愛と向き合えないってことじゃないの?」と笑われた。意外と鋭い指摘だった。

「好きじゃない」が「読み方がわからない」であるのは癪なので、6月を恋愛小説強化月間として図書館でまとめ借りすることにした。
どれを読んだらいいのかあてがないので、先に「この恋愛小説がすごい 2006」と「恋愛小説ふいんき語り」という恋愛小説紹介本を2冊借りてみた。

恋愛小説ふいんき語り

恋愛小説ふいんき語り

この2冊、どちらも恋愛小説レビュー本で、ほぼ同時期の発売なのだけれど、スタンスが全く異なっていて大変興味深い。
前者はあきらかに、恋愛小説が好きである程度読み方がわかっているひと向けのものだった。そういう人に向けて、「この本はあなたのツボをこういう感じに刺激しますよ!!」とアピールしてくる、基本的には作品の主旨をそのまま解釈・展開していくためのものだった。要するに批判も茶化しも禁止、空気読めているサークルだ。
たいして「恋愛小説ふいんき語り」は、人気ゲームデザイナーの男性3人が(<ーこの時点でまずおかしい)最近のものを中心に恋愛小説をまじめに読み、そしてそれをゲーム化するとしたらどのようなシステムになるか?!という観点からそれぞれの小説の構成・システムの理解に努めている。「センセイの鞄」のゲーム版のシステムは「シーマン」になってしまうし、(「ツキコさん」って答えてくれるだけ)「この恋愛小説がすごい!2006」で一位になっていた「ナラタージュ」はホラーになっていた。茶化し全開ではあるが、ストーリーをシステムとして理解するという試みは非常におもしろかった。
この2冊の両方に取り上げられているもののうちで、私が唯一読んだことがあったのは「ナラタージュ」だったのだけれど、当時自分が思ったのは「タイトルは、『君にもできる!女子大生のヤリ捨てかた〜まずは高校教師になるところから始めよう〜』 かなぁ(あ、なんかAVみたいになってしまった。)」という感じで正直全く感動しなかった。全く信頼関係がないことに気づいていない主人公の言動はどちらかというとホラーに近いと思う。「ふいんき語り」で、この本のオビの文章がそのままホラーとして読みかえられることに気づいた部分は相当面白い。
ナラタージュ

ナラタージュ

今は山田詠美の「無銭優雅」を読んでいるがもともと苦手な作家ということもありなかなかおもしろくならない。一人称の中の節制された自己陶酔に耐えつつ読んでいる。「死って、恋のすげえ引き立て役なんだよなあ」なんてことに自覚的な主人公がいるのは結構なことだけれど、ああ、一人称の地の文、気持ち悪い。自己陶酔。開き直り。いつ面白くなるだろうか。

無銭優雅

無銭優雅