感想

  • ベルギー人であることは重要ではない、と主張するトゥーサンと、「いや、ベルギー人的なところがあるはずだ」とツッコむ二人、という展開で、終始笑いの混じる和やかな講演会だった・・・が、この「笑いの混じる」というところが微妙で、会場の半分は「トゥーサンがしゃべるタイミングで」笑い、残り半分は野崎先生の通訳を待ってやっと笑うことができる。自分はフランス語を習ったことが全く無いので引け目に感じることもないけれど少しさみしい。ともあれトゥーサンの話の面白いところを日本で一番心得ている野崎先生の通訳はとても良かった。
  • 小林氏がトークの中で一瞬触れていた「国家によって言語が制御されていないベルギーでの文学はどうなっていくのか?」という話題があまり発展せず残念。多言語国家である→複数の言語を使用できるヒトが多い→言語を選択して表現できる→外国(フランス/オランダ、それ以外)に活躍の場を広げられる・・・という流れは、それまでの話の筋から追えるけど、それだけでは分析にならないのでもっと情報が欲しかった。話としては「コスモポリタンになっていく」という一語で済まされてしまった。一語にこめられた意味が多様すぎて分からない。
  • ベルギーでの文学賞受賞も掘り下げて欲しかった。論旨は、「ベルギー人で、フランス語で書き、作品にベルギーは全く登場しない作品を書く作家が、(国籍が問題でないならなぜ)ベルギーの文学賞に選ばれたのか。ベルギー文化にどのように貢献したと見られているのか。」ということのはずなのに、なんだかズレてしまった。
  • 岩本氏の「ベルシシズム」に関するトゥーサンの回答が、彼の「フランス文学をするベルギー人作家」としてのスタンスを最もよく表しているように思う。ベルギーのフランス語、を使用する自負と、それが「フランス語を豊かにする」という意識。
  • 結びの挨拶は、まさにトゥーサンの作品そのもの(特に「ムッシュ」や「テレビジョン」かな)で一同爆笑。
  • とりあえず、彼がベルギー人であることを意識しながら全巻再読してみよう。