夕立に似た世界の終わり

したたかに酔って帰り、こんな夢を見た。

友人と遊園地を歩いている。観覧車やメリーゴーランドといった、おとなしい遊具がぽつぽつと見える。その間に、車寄せとベランダのついた東部アメリカ風の白い邸宅群と、家族連れが寝転ぶ芝生が広がっている。
しばらく進み、邸宅の間を抜けると小高い丘になり、WindowsXPデスクトップの画像のように広々とした草原を眺める。
ぼんやり眺めると遠くに雨雲が盛り上がるのが見えた。横長に空を覆うのではなく、地面から生えたように高く盛り上がり、明るい空に暗い灰色の塊となっている。まだだいぶ距離があるのに異様に大きい。どんな夕立がくるかと、慌てて邸宅のひとつに逃げ込む。
これで雨はしのげると思い振り返って雨雲を見ると、大きさ、黒さにぎょっとした。ますます巨大になったそれが、トライ寸前のラグビー選手の一団のように、なだれ込み迫ってくる。まだ雨音はしない。
地面から立ち上がる黒雲の足元を見ると赤く光っている。近づくにつれ、地面から火柱が何本も何本も吹き上がっているのだということがわかる。そして灰色の塊は雨雲ではないことに気づく。火柱は目の前にある。火柱は一本ごとに駐車場6区画くらいを吹き飛ばしていく。ガラスの床を下からハンマーで殴るように地面が壊れる。逃げ込んだ邸宅も一部屋ずつ火柱に吹き飛ばされている。すでに「助かる」とか「逃げる」とかいう問題ではない状態になっている。
友人の手を握って逃げていたはずだったが、気がつくと、知らない婆さんの手を握っていた。火に照らされた汗だくの顔をお互い見合わせる。「いっしょに消し飛ぶかぁ」と言ってみた。彼女は逆張りの泣き笑いのような顔だった。自分も多分照れ笑いをしていた。後ろにある部屋がまた消し飛んだ。