後憂、箱根逃避行

金・土と一泊で箱根に行ってきた。逃避行である。何からってそりゃ会社と転職活動。自分で蒔いた種ながらじゃらじゃらかかってくる電話とどんどん届くメールに憂くなって逃げたくなった。
しかし最新型ロマンスカーで逃げても、箱根くらいじゃ、全然電話からもメールからも逃げられやしないのだった。逆に言えば、都内でも、携帯を切れば・・・あ、メールサーバが生きているかぎりは、ダメか。去年の伊豆・式根島は電波が入らなくてよかったのになぁ〜。
5日間の夏休みも転職活動と発熱で飛んでしまい、ちょっと悶々としていたので、何もしない旅に徹することにした。いつも調べ物をして企画っぽく出かけてしまうけれど何もしない。宿も湯本でそれ以上奥には行かない。美術館も行かない。でも、富士屋ホテルだけは寄ってしまった。
昔大学生ころに行った際の、古くて素敵だなぁ、という印象を頼りに行ったけれど、今見ると素敵ながら相当印象は珍妙な・・・。まず、洋館だと思っていたけれど、少なくとも本館は洋館ではなかった。欄間はあるし、階段の手すりには擬宝珠がついているし、そこらにある置物も彫り物も和風だし、かなり戸惑う。
洋館二棟はまぁコロニアル様式かなと思えば、車寄せの上が唐破風だったりとなんとも折衷式だ。ただ、単純に「擬洋風」と言い切って済ましづらいのは、ユーティリティとしては十分に「洋館」で、装飾が和風だからだろうか。さすがに外国人が滞在することを前提としているだけに、「背の高い人が洋服・靴で歩き回って・・・」とかいった要件は満たすようにできている。
そうすると「洋館、装飾だけ(外国人向けに)和風」かなと思って観ようとすると、見上げるとぶっとい梁がわたっていたりして、構造も和風だなぁ、と感じてしまう。
一回りしてみると、よく保存してはあってもやはり痛みが目立ち、こんなに愛されていてもいつかは壊される日がくるのだろうかと思う。このわらわら鳴る、景色のゆがむ吹きガラスの窓が、少しづつ普通のガラスに置き換わっていく様が寂しい。自由学園明日館のように、分解して修繕をしてもらえる見通しはなかろうか。
おそらく配管などにもそうとうガタがきているだろうし。古いホテルは、外見よりもそういった「裏側」の維持が困難で、自分が以前バイトしていたホテルは、「裏側」のリニューアルをするだけの金が無く潰れた。今は跡地に、ホテルよりももっとホテルらしい、一部屋数億、数十億のマンションが立っている。

泊まった旅館はごく普通の温泉宿で、のんびり風呂に入り、テレビに突っ込みを入れながらお寿司を食べ早く休み、翌日は宿から5分の銭湯に浸かって昼過ぎには新宿に戻っていた。こわごわ留守電を聞き、メーラを開くと、そう悪い知らせはなくほっとした。追うものがなければ逃避行にはならないが、また逃げてみてもいい気がする。