ビールの最初の一口(とその他のささやかな楽しみ)

ビールの最初の一口―とその他のささやかな楽しみ
図書館で、タイトルだけで借りた一冊。いや、タイトルだけでぐっとくるでしょう。
食べ物と食べ物を包む生活、食べ物とは関係のないよしなしごとについての軽いエッセイ。フランスの大ベストセラーらしい。
表題作、夜明けにパンを買いに歩く楽しみを描く「歩道のクロワッサン」、オピネルのナイフ(ポケットナイフ)の郷愁について語る「ポケットの中のナイフ」、友達の家で一緒に料理を手伝う「不意のお招き」が好み。
こういう、日常のなんてことのない『私の好きな一瞬』を描くエッセイ、「ものづくし」というのは、活字の中でもこれ以上無いくらい好き嫌いの出る代物で、ときに壁に投げつけたくなるようなものも多いけど、これは訳文のセンスもあるのか、好みに合った。気取っている。ときどき言い訳がましい。けれどまぁ不快ではなく楽しめる。くせのある友人と一緒に食事をしながら、とりとめのない会話を楽しむ、そんな感じ。またビールが飲みたくなってしまう。そしてちょっと遠くのパン屋まで白い息を吐きながら歩いてみたくなる。