問題な日本語

問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?

接客・応対の言葉遣い向上のために、amazon売り上げランク14位のこの本を、課長が5冊まとめ買いしてきた。

読んでみるとなかなか意外な編集・執筆方針で驚く。言葉遣いの本というと、知ったかぶりが他人の誤用例を見てほくそ笑むような内容だろうなと踏んでいた。
ところが「全然いい」、「こちらきつねうどんになります」、「コーヒーのほうお持ちしました」など、しばしば誤用とされる用法も簡単には断罪しない。
「どのような場合であればふさわしい用法として認められるのか?」「言葉そのものの意味がどのような理由でずれてきたのか?」「いまどきの言い方なのか?昔からありえたのか?」などの検討を行った後に、現状どのような対応をとるべきかが暫定的に示される。
(「現在は明らかに誤用だが・・・」「・・・という場合なら適切」「・・・という印象をあたえるので避けるべき」等。)

自分が面白いと思った箇所は2点。

  • 「全然+肯定的な言葉」は単に「断然」の間違いとして使われているではない、言外の否定的な予想に反して、肯定的な状態であることを示すためにつかわれていることがある、というもの。(「大丈夫?」「全然大丈夫」など)
  • 「すごいおいしい」について・・・(普通「すごくおいしい」と連用形が使われるべき、と指摘される用法)この用法が近年の流行というわけではなく昔からありえたことを示す例に「金色夜叉」をひいている。その「恐ろしい光るのね、金剛石」という例は自分が以前疑問に思っていた箇所だったので、これが今でいうと単に「すごいおいしいのね、ネギトロ。」くらいの言い方だとわかって少しすっきりした。むしろ明治時代くらいの特有の言い方なのかと思っていた。

タイトル自体があきらかに問題提起になっているあたりも面白い。

いわゆる「誤用」とされるものを感傷と侮蔑まじりに斬って捨てるわけでもなく、こういえば正しいとマニュアルがあるわけでもないので、部下に配るマニュアルとしては、どうかな。