歌野晶午まとめ読み1「ROMMY 越境者の歌」1998

ネタバレ有り!白文字注意!
読んでも読んでもこの人がわからないよ!とりあえずこの人はフーダニットには全然関心が無いということ、トリックの解題に作品の主眼を置いていないこと、それはいままで3冊ほど読んでわかったつもりだけどやっぱりどう読んだらいいのかわからないよー。

ROMMY (講談社文庫)

ROMMY (講談社文庫)

出版社/著者からの内容紹介
録音スタジオで、起きた密室殺人!ROMMY(ロミー)とは何者だったのか?天才シンガーの死の謎に迫る。アンコールの大合唱に応えてROMMYがステージに上がると、スタジアムが揺れた。が、もうそんな情景を見ることはない。録音スタジオの仮眠室で彼女は息絶えていた。犯人はスタッフの中にいるのか!?時代を疾走して逝った、天才シンガーの隠された真実とは。歌野晶午がミステリー・フロンティアに挑む問題作。

「発表時のサブタイトルは「そして歌声が残った」であったが、後に文庫版で出版される際に改題された。(Wikipediaより)」であるそうですが、そのことによってサブタイトルが思いっきりネタバレになってしまってます!いいのか?!越境者っていうから、解離性人格障害か、または性同一性障害か、それによって1人二役をやる仕掛けか・・・と思ったら・・・。ちょっとちがったか。
ミステリで定番の「叙述におけるパートAの●●さんとパートBの△△さんは同一人物?!」をあまりといえばあまりな方法で解決していて驚いた。密室や犯人当てもほとんど機能していないというか、重視されていない。
ただ、この本の良いところは、叙述ミステリ解決のカタルシスの定番である「●●だと思っていた人/物が実は△△であることがわかったことにより、これまで■■と思っていた人/物/行動が実は☆☆であることがわかり、物語が全く違う光景を見せた」という部分が、非常に人間味ある、暖かい描かれ方をしているところかと思う。人気ミュージシャンの揺籃期をともに歩き、支え続けた「彼」は、自分の夢も放棄し、スターにすがることで自分の存在を確かめる哀れな男なのか?住む世界が変わり、すでに不要とされていることに、邪魔と思われていることにすら気づけない痛々しい男なのか?自分を省みないスターを恨み、心を病む男なのか?
やはり本格ミステリの定番であるところの「損壊された死体」の命題が導く結論が、悲しいながらも夢に向かっていた人々の遺志を感じる読後感となります。おおお・・・男気を感じてぐっときたよ・・・。この「叙述によるシチュエーションの転換」は、後に「葉桜の頃に君を想うということ」で大成した、と考えるべきか。

というわけでミステリではなく芸能界を描いた(普通の)人間ドラマとして読んだ人の感想はとても良いようです。
ほかの人の感想↓
http://blogs.yahoo.co.jp/hima_o_ikiru/21889735.html